武田薬品のリストラではMRの人員削減はどのくらいだったの?
2021年も武田薬品のリストラや退職勧誘はあるの?
これらの疑問にお答えします。
2020年、製薬会社最大手の武田製薬でリストラでの人員削減が行われました。
製薬会社リストラに関して雑誌で特集されるなど、話題になったのでご存じの方も多いと思います。
そこで、この武田製薬のリストラによる人員削減の内容と、リストラの理由、そして今後2021年のリストラはどのように進むのかについて説明します。
・武田薬品での2020年リストラでの人員削減内容とその理由
・2021年以降の武田薬品でのリストラ・退職勧誘はどうなるのか?
武田薬品での2020年リストラでの人員削減内容とその理由
武田薬品の2020年リストラでの人員削減状況
2020年8月17日、製薬大手の武田製薬工業は「フューチャー・キャリア・プログラム」として、国内営業部門に対してリストラでの希望退職募集を行いました。
武田製薬には、国内従業員は約5,350人、MR(医療情報担当者)は約2,100人います。このうち、会社から正式発表はありませんが、500~600人が希望退職者に応募したと社内で言われています。
この人員削減について、会社側見解では、オペレーションオペレーションエクセレンスの一環とのこと。
つまり、社内の業務改善プロセスが定着し競争上優位の状態としての人員削減です。
しかし、一般的に考えれば、業務改善うんぬんということでなく、単にリストラでの人員削減と言えるでしょう。
8月に発表した具体的な希望退職募集内容は次の通りです。結果的に約500~600名前後の希望者が11月末に退職しました。
対象者:勤続年数が3年以上(定年後再雇用者含む)の国内ビジネス部門
(ジャパン ファーマ ビジネス ユニット、日本オンコロジー事業部)所属社員
※研究開発や製造部門は含まず
対象年齢:30歳以上
募集人数:非公開
募集期間:2020年9月28日~2020年10月16日 ※規定人数に達した時点で締め切り
退職日:原則として2020年11月30日
条件:退職金、特別加算退職金、再就職の支援
また、リストラの条件の特別加算退職金は、勤続年数×3ヶ月程度(最高60ヶ月分)と言われています。
武田薬品の2020年リストラ人員削減の理由
武田製薬工業は、世界の製薬ランキング9位に入る製薬大手企業です。
業界を牽引している大手企業に関わらずリストラが必要なのは、2019年の企業買収が大きく影響しています。
武田薬品は、2019年にアイルランドの製薬会社シャイアー(Shire plc)を6兆2,100億円で買収しました。国内企業のM&Aとしては過去最高金額です。
その結果として有利子負債が大きく残っています。
【2020年3月 有価証券報告書】
有利子負債の合計 4兆8,991億
また利益率の悪さも2020年3月に際立っており、会社規模は大きくなりましたが、利益率が下がっています。

さらに国内売上は、第一三共製薬に抜かれ、時価総額も中外製薬、第一三共製薬に抜かれ、国内一位だった武田としては一刻も早く巻き返しを図りたい状況です。
これらが反映された株価として、2018年買収計画前は6,644円(2018年1月)でしたが、昨年末~2021年1月では3,800円前後で推移しており、2018年1月から4割以上も下がっています。

さらにもう一つの大きなリストラ理由として、コロナ禍の影響です。
2020年コロナ禍では、外出自粛によりMRが営業できない状況に陥りましたが、これが逆にリストラを加速させてしまいました。
コロナ禍の影響で売上が下がったのではなく、逆に
MRが動けないにも関わらず、売上が以前と変わらなかったのです。
MR社員が動かなくても売上を維持できる、つまり、MRが不要、MRをもっと減少できることが明らかになってしまったことで、これによって、クリストフ・ウェバー社長がリストラを断行しています。
2021年以降のリストラはどうなるのか?

武田コンシューマーヘルスケア売却の影響
武田製薬では、日本の国民薬をあっさり売却しており、2020年8月24日に武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)の米投資会社への売却を発表しました。
武田コンシューマーヘルスケアといえば、アリナミン、ベンザ、タケダ漢方胃腸薬、ボラギノールで国民になじみ深い商品を扱っており、TCHCとして赤字でもないのに売却をされています。
売却理由は、武田製薬の中核事業と異なるため、とのことですが、明らかに有利子負債を減らすための売却と思われます。
この売却益は2400億円とみられていますが、有利子負債4兆8千億円に対しては、まだまだと言えるでしょう。つまり、今後も大規模なリストラを継続しないと、武田薬品自体の存続が危機に陥ってしまいます。
つまり、2021年も引き続きMRを中心とした大幅な人員削減が継続すると思われます。
MR白書での2021年予測
MR白書によれば、2019年度のMR数は5万7158人であり、前年から2700人ほど減少(約4.5%減)しています。これは、6年連続での減少で、減少スピードは年々上昇しています。

つまり、製薬業界でのMR削減はごく一般的な事象です。
更に、コロナ禍で売上が減らなかったことで、武田製薬のMRも減少できるとマネジメントが認識し、2021年にもさらなる削減が見込まれるでしょう。
武田薬品のビジネスユニット再編の影響
武田製薬の国内営業部門は、がんや精神疾患などの疾患領域ごとに存在するビジネスユニット部門で構成されています。
2020年11月の社内構造改革・ビジネスユニットの再編では、生活習慣病のビジネスユニット部門が大きく縮小されました。この再編によって、これまで全国に150以上あった営業所が50カ所になりました。7割も削減されています。
武田製薬では、今後の市場の成長が見込める、がんや希少疾患など専門性の高い領域を強化していく方針で、逆に、今まで多くの人員を割り当てていた生活習慣病を縮小していきます。
この理由は、生活習慣病に対する薬はすでに特許が切れていたり、価格が安い後発品も出ているからです。
今後更に、生活習慣病ビジネスユニット部門でのMR絞り込みが行われたり、全社的にMR1人ひとりが担当するエリアが拡大されて、営業周りに行ける医師を絞り込むまなければならない程、業務が詰め込まれると思われます。
その状態で更なる退職勧誘が行われたら、多くのMRが耐え切れず、希望退職へ応募することになるかもしれません。
リストラでの退職勧誘に対してどのように対応すべきかは、こちらの記事にまとめています。
武田薬品の2021年リストラによる人員削減 まとめ
今回は製薬大手 武田薬品のリストラによる人員削減について整理し説明しました。
製薬会社のリストラといえば、2017年以降、MSD、大日本住友製薬、サノフィ、日本ベーリンガーインゲルハイム、大正製薬、アステラス製薬などが挙げられます。
製薬トップ企業として君臨し、優秀な人材も多い武田製薬工業が、今回2020年にリストラを断行しました。これにより、製薬業界の状況が一変し、リストラが一層加速されるものと思われます。
今後も、武田製薬や製薬会社でのリストラ、人員削減について、継続して注目していきたいと思います。
コロナ禍での武田薬品以外のリストラ実施企業一覧についてはこちらにまとめています。