ニコンって将来性だいじょうぶ?そろそろ潰れるんじゃない?
ニコンは2021年の大規模リストラで巻き返せるのかな?
これらの疑問にお答えします。
ニコンといえば、キヤノンと共にデジタル一眼レフカメラで業界を牽引した有名企業です。
しかし、最近のデジタルカメラ市場は急激に縮小しています。スマホ搭載のカメラに消費者ニーズを奪われているからです。以前は出荷台数が1億台を超えていたデジタルカメラ市場が今では約9割も減少しています。
このように厳しい市場の中で、更にニコンは主力事業でも遅れをとりました。
デジタル一眼レフでのミラーレス対応の流行に対応できず、ソニーに大きくシェアを奪われる結果となっています。
2020年11月に発表された2021年3月期決算見込みでは、過去最悪規模となる450億円もの赤字が見込まれています。とても心配な経営状況です。
日本を代表するカメラメーカーだったニコンはこのまま潰れてしまうんでしょうか?
この記事では、ニコンの経営状況と将来の経営立て直しについて、2021年のリストラによる人員削減や希望退職についてまとめました。
・ニコンは潰れてしまうのか?今の経営状況と将来性について
・ニコンによるリストラでの2021年人員削減、希望退職について
ニコンは潰れてしまうのか?今の経営状況と将来性について
ニコンの売上推移と事業別状況
ニコンの過去5年間の売上と利益は次のように推移しています。


2020年11月5日に発表した2020年上期(4~9月期)の営業損益は466億円の赤字となりました。
前年同期は175億円の黒字だったので、600億を超えるマイナスです。
この主な原因は、ニコンが経営の柱としているカメラ事業の業績悪化によるものです。
そして、2021年3月期の営業損益の見通しも750億円の過去最悪の赤字となることを発表しました(2020年11月発表)
その後、2021年2月の第三四半期(4月~12月期)の発表では、営業損益は367億円の赤字となりました。赤字が100億円減っています。
また、通期(4月~3月)の見通しも上方修正しており、650億円となる見込みです。

なお、前年同期は67億円の黒字でした。100億円赤字が少ない△650億円になったとしても経営が厳しい状況に変わりありません。
業務セグメントの内訳ですが、映像事業は前期比約4割減の1400億円、営業赤字450億円(前年同期は171億円の赤字)となる見込みです。
ご参考まで、株価は第三四半期の見通しが上振れしたことで最後少し上げています。

ニコンの映像事業について
2020年のデジタルカメラの世界総出荷台数は888万台で、前年比58.5%の落ち込みです。
10年前の2010年は1億2146万台だったことを考えると93%も減少しています。市場自体が壊滅状態にあると言えます。
このように市場規模が激減している中で、比較的人気が集中しているのがミラーレスカメラです。

内部のイメージセンサーがフルサイズのタイプ「フルサイズミラーレスカメラ」が映像のプロ・ハイアマチュア層や、映像系Youtuberから高い評価を受けたことで人気になっています。
一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)によれば、2020年国内向けの出荷台数は次の通りです。
【 2020年国内向けの出荷台数 】
ミラーレスカメラ 2万3,009台(金額:14億6,620万4,000円)
一眼レフカメラ 8,285台(金額:6億5,378万5,000円)
明らかに一眼レフからミラーレスカメラへトレンドが移っていることが分かります。
しかし、ニコンはこのミラーレスカメラの取り組みに一歩出遅れしまいました。
なぜなら、今まで大きな売上をあげていた一眼レフと競合してしまうため、一眼レフを捨てられず、ミラーレスへの切り替えがうまくできなかったからです。
このもたつきの間に、ソニーがミラーレスカメラで生産台数を伸ばし、2019年時点もニコンを抜いて2位になっています。
シェアランキングを見ると、まだニコンがミラーレスへシフトできていないことが良く分かります。
1位 キヤノン 56.3%
2位 ニコン 41.1%
3位 リコー 2.4%
1位 キヤノン 30.9%
2位 ソニー 25.9%
3位 オリンパス 23.4%
2020年下期には、ミラーレスを3モデル投入しました。
「Zシリーズ」の新製品で、フルサイズミラーレスカメラ「Z 7Ⅱ」「Z 6Ⅱ」です。
しかし、結果として2020年第三四半期の売上に大きなインパクトを与えることは無く、経営赤字に陥っています。


ニコンの半導体事業について
ニコンの営業事業以外の事業としては、精機事業、ヘルスケア事業、産業機器事業があります。

2020年3月期のセグメントごとの売上額としては、次のようになっています。
映像事業 2258億円
精機事業 2397億円
ヘルスケア事業 620億円
産業機器・その他 633億円
ニコンでは、すでに映像事業よりも精機事業(半導体)の方が売上が上回っているのです。
しかし、この精機事業も先行きが思わしくありません。
主要顧客が米インテルで、売上の70~90%を占めると言われていますが、その米インテル自体が米エヌビディア他の台頭によって極めて苦しい状況になっているからです。
インテルに売上が偏っている理由として、2002年にニコンが経営難に陥ったのですが、その時に転換社債を引き受けたのがインテル社だからです。それ以来、精機事業ではインテルに頼った経営が行われてきました。これが裏目にでた形です。
ニコンの第三四半期の決済短信によれば、半導体露光装置分野で主要顧客の投資一巡等のため、販売台数が減少したとあります。
しかし、これは同じ技術、同じ製品を継続しているから起きることであり、これも次世代技術、新装置への開発切り替えがうまくいかなかったことも原因の一つでしょう。
半導体の最先端技術である光源にEUV(極端紫外線)を使う技術に対応した装置分野では、オランダのASML社に圧倒的なシェアを奪われており、日本勢は次々に撤退しています。
2000年以前の半導体露光機市場でのシェアは、ニコンがASMLを上回っていたのですが、2010年頃にはASMLがシェア約8割、ニコンは約2割と立場が大きく逆転しています。
主な原因としては、ASMLの顧客がサムスン電子、ハイニックス、TSMCであり、汎用的な製品を求められていたこと、そして、ASMALの研究は社外との共同論文が多く、国際的なコンソーシアム、コンポーネント提供企業、露光機以外の製造企業との連携が強化されたためと言われています。

日本は技術もあり、特許も多いのに、グローバルでの汎用プラットフォーム確立で負け、商用へ導けなかったという悔しい結果ですね。
ニコンの将来性について
赤字へ転落しているニコンの将来性はどうなのでしょうか?

現在主力事業として考えられる映像事業ではキャノンに圧倒され、ミラーレスでもソニーに2位の座を奪われています。
2020年のカメラ、レンズ レンタルランキングを見るとこれが明らかです。
1 Canon EF 24-70 f/2.8L II
2 Canon EOS 5D Mark IV
3 Canon EF 70-200 f/2.8L IS II
4 Sony Alpha a7 III
5 Canon EF 70-200 f/2.8L IS III
6 Canon EF 35 f/1.4L II
7 Canon EOS R
8 Canon EF 50 f/1.2L
9 Sony FE 70-200 f/2.8 GM OSS
10 Sony FE 24-70 f/2.8 GM
(https://www.canonrumors.com/canon-once-against-dominates-rental-market-share-in-2020/)
ニコンが10位までに出てきていません。現実はキヤノンの圧勝ということです。
そして、新しい事業として期待されていた精機事業でも、将来的な勝算が見えない状態になっています。
ニコンの2019年から2021年までの3か年の中期計画によれば、2020年度はコスト改革と位置付けられています。

U字収益回復のために、経営基盤を改めて整備し、固定費等のコストを削減している最中となっています。
つまり、今後もリストラによる人員削減が行われる可能性が高いということでしょう。
ニコンによるリストラでの2021年人員削減、希望退職について
ニコンの過去のリストラによる人員削減・希望退職について
ニコンでは過去にどのようなリストラをしてきたのか、人員削減、希望退職の情報と、また工場閉鎖等の情報を時系列にまとめました。
希望退職1143人
海外工場で約700人の人員削減
宮城県の工場で手がけるデジタル一眼レフカメラ本体の生産をタイ工場に集約
販売会社を統合
海外で生産や販売を中心に2000人削減
山形と福島のレンズ工場を閉鎖へ、栃木に集約
ニコンの2021年リストラについて まとめ
海外の従業員は2022年3月までに海外全体の約2割に当たる2000人を削減します。
2021年3月期までに合計100億円を投じて、デジカメ商品の点数絞り込みや人員削減を行うことを発表しています。さらに一層の構造改革が必要な状況になっています。
リストラによる人員削減や希望退職の募集などを行うことで、カメラ事業を中心に22年3月期までに全社で合計800億円の固定費を削減していきます。
ニコンの馬立稔和社長は
「映像事業は売上高が1500億円以下でも黒字を出せる筋肉質な構造にしたい」
と、カメラ中心に構造改革を断行する姿勢を強調しています。
売上が伸びない中で、固定費をカットすることで黒字を出せる体質にする、
つまり、今後もリストラによる人員削減が行われる可能性が高いということでしょう。
ニコンは潰れてしまうのか、リストラでの人員削減・希望退職まとめ
今回は、ニコンの経営状況と将来性について、そして、リストラでの人員削減・希望退職についてまとめました。
極めて厳しい状況のニコンですが、今後のリストラがどのように実施されていくのか、注目していきたいと思います。
コロナ禍のニコン以外のリストラ企業一覧については、次の記事でまとめています。