ジョブ型といえば厚生労働省が主導的となりますが、企業の話なので当然経済にも関係し、経済産業省も一部深く関わっています。
そこで、経済産業省から公開されたジョブ型に関する記述内容をまとめました。それぞれ分かりやすいように簡単な解説をご説明します。
経産省を調べる前に、まずは厚労省でしょ!というときは、こちらにまとめているので確認してみてくださいね。経産省と違ってびっくりな内容かも。
- 経済産業省による「ジョブ型」に関する発信
- 産業技術環境政策について(令和2年8月)
- Society5.0 時代のデジタル・ガバナンス検討会(令和2年7月)
- Society5.0時代におけるデジタル・ガバナンス検討会 検討資料(2020年5月)
- 学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果についての検討会(令和2年3月)
- 産業構造審議会 2050経済社会構造部会/経済産業省による「ジョブ型」に関する発信(2019年5月)
- 変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言/経済産業政策局(2019年3月)
- 人材競争力強化のための9つの提言/経済産業政策局 (2019年3月)
- 競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会(平成28年11月)
- 「雇用関係によらない働き方」について/経済産業政策局(平成28年10月)
- 経済産業省による「ジョブ型」に関する発信 まとめ
経済産業省による「ジョブ型」に関する発信
経産省の資料を比較的新しいものから列挙して解説しています。
産業技術環境政策について(令和2年8月)
②イノベーション人材の育成・流動化の促進
・未来ニーズを捉えたイノベーションの創出には、研究人材、マネジメント人材、アーキテクト人材、投資人材など、幅広い人材(「イノベーション人材」)の層を厚くすることが必要であり、それぞれに応じた育成環境を整備することが必要。
・育成と並行して、クロスアポインメント、兼業、副業等の人材の流動化を促進することが必要。
・産業界の人材ニーズを大学と共有し、人材育成等に係る具体的取組を議論する産学イノベーション人材循環育成研究会を設置。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/pdf/009_02_00.pdf
イノベーションに向けた人材の流動化も検討されています。育成環境の話、大学と産業界とも今後連携していくことになりそうです。
経産省として、兼業、副業での人材流動化も促進しようとしているんですね!
Society5.0 時代のデジタル・ガバナンス検討会(令和2年7月)
2.1.組織づくり・人材に関する方策
・テレワークの急速な普及によって、極端に忙しい人と、何の仕事も無い人に分かれた。業務を標準化してジョブ型雇用を取り入れるなど、グローバルスタンダードに近づける必要がある。
・ジョブ型雇用が進むと、自主的に退職する人が増える可能性がある。どの時点で退職者の情報アクセスの遮断をするのか等の体制が必要である。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/003_gijiyoshi.pdf
ジョブ型雇用を取り入れてグローバルスタンダードへ近づけようとしていますね。
また、ジョブ型導入後の退職者増加についても検討されています。
Society5.0時代におけるデジタル・ガバナンス検討会 検討資料(2020年5月)
人的資本②ジョブ型雇用・ギグエコノミーの拡大
・ITツールの導入拡大とテレワークの急速な浸透でミッションの構造化・明確化、価値達成目標管理化、業務管理効率化、評価体系の透明化と厳格化が進む可能性。
・これに伴って、ジョブ型雇用・ギグエコノミーの拡大、メンバーシップ型雇用の見直しにも波及していく可能性。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/003_03_00.pdf
ジョブ型雇用とギグエコノミーとの関係を整理し、メンバーシップ型のAIによる代替での変革を加速させるようです。
ルーチンワークはAI代替が推奨されていくので、単純労働しているサラリーマンは解雇へつながりそうです。
人的資本③知的労働需要の海外流出
リモートワークの定着、ミッション明確化、業績評価合理化、ジョブ型雇用加速に伴って、ホワイトを含めて、知的労働需要の海内流出が進むおそれ。一方で、デジタル技術の進展により、世界規模でのバーチャルワークという新しい働き方到来の可能性も。
ジョブ型雇用の導入後について検討されています。企業外だけでなく海外へも人材が流出する可能性はあります。また、ブルーカラーのAI化による雇用喪失と、ホワイトカラーの雇用も途上国労働者で代替えされ減少していくとの見方があります。
※ジュネーブ国際開発高等研究所のR.ボールドウィン教授提唱の「第3のアンバンドリング」
バーチャルワークという新たな働き方に注目しているところ、日本政府も頑張ってますね!
学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果についての検討会(令和2年3月)
※文部科学省と経済産業省の共同開催
産学協議会では、文部科学省から提案のある、大学院の理工系の修士2年生以上のジョブ型採用に繋がる研究インターンシップの試行に協力するということで合意予定だ。
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/long_term_internship/pdf/003_gijiyoshi.pdf
文部科学省によってジョブ型雇用へ準備するインターンシップ試行もかなり検討されているようです。
経済産業省の調査で、早期離職とインターンシップの関係の部分。
ジョブ型でインターンシップがだんだん浸透していくと、入社後の仕事の種類に対する期待値が高まるときに、入り口だけ整備をして入った後ものすごく地味な仕事をさせるとすぐにやめてしまうということもある。この辺りを連動して設計していく必要があり、インターンシップだけを強化しても難しいところもある。
海外ではジョブ型に備えた学生のインターンシップが行われていますが、早期離職との関係もあるようです。
ジョブ型で就職した期待値に対して、現実的な業務がそのジョブにそぐわないことも多いのかもしれませんね。
産業構造審議会 2050経済社会構造部会/経済産業省による「ジョブ型」に関する発信(2019年5月)
これからの人財マネジメント【 いわゆる ジョブ型 】
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/006_07_00.pdf
「役割・ミッション」「職務」の限定
→ 責任範囲明確化による効率向上
→ 相対的に、狭くて深い業務経験
・育児・介護等、様々な「制約」を持つ人財が常態 ( ワークライフバランス )
・成果に見合った時間効率性を重視
・「知的生産性向上」をねらいとした、多様で柔軟な働き方( タイム&ロケーションフリー )
・「役割・仕事の大きさ」 に基づく、成果・貢献期待 ( 「仕事」基軸 )
・簡素な制度を前提とした、職場主導の個別管理
・職務・職責に応じた”年齢によらない”処遇
・透明性・納得性重視
ジョブ型の定義もしっかりと審議されています。働き方、処遇、チームのあり方について、人財マネジメント転換が必要になりますね。
高齢者雇用の見直し方向について
『 ジョブ型(仕事基軸)の人財マネジメント移行によるエイジフリー化 』 を中期ゴールとし、現行の高齢者雇用の実態を踏まえ、段階的な見直しを推進
ジョブ型を導入することで、高齢者雇用も実現しやすくなり、将来の雇用でのエイジフリー化にもつながりそうです。もちろん、検討課題はいくつかあり、定年制のあり方検討や退職金・年金等、関連制度との関係整理が必須になります。
参考: 部会取りまとめに向けて
◆ 「多様な働き方をする多様な人財」 に、より高い創造性や労働生産性を発揮してもらうためには、従来のような 「メンバーシップ型 (人基軸)」 のしくみから、「ジョブ型 (仕事基軸)」 のしくみへ転換を図る必要がある。
今後は、創造性や多様な人材確保のために、仕事基軸となるジョブ型への展開が言及されています。
この産業構造審議会メンバーとして、日立の執行役専務 中畑英信氏がいるため、資料自体も日立のジョブ型に関する動向や考え方が反映されているようです。
変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言/経済産業政策局(2019年3月)
方策②:経営に必要な多様な人材確保を可能とする、外部労働市場と
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_management/pdf/20190326_01.pdf
連動した柔軟な報酬制度・キャリア機会の提供
・従来:新卒一括採用による無限定正社員を中心とした人材ポートフォリオ、キャリアパスが中心。安心感を持って働けるよう、内部公平性・安定性の確保を重視した人事制度を整備
・今後:多様なキャリア・雇用形態の人材を活用し、様々なニーズを持った人材を処遇できる、外部労働市場と連動した柔軟な報酬制度をはじめとした人事諸制度、多様なキャリア機会を提供
今まではメンバーシップ型による新卒一括採用をしていたけど、今後は多様なキャリアや雇用形態の人材活用のために、また外部から人材を採用するような人事諸制度、つまり「ジョブ型」が推奨されてきているということです。
ジョブ型という言葉は出てきていませんが、まさにジョブ型のことを言っていますね!
人材競争力強化のための9つの提言/経済産業政策局 (2019年3月)
日本型人材マネジメントを取り巻く課題は多い
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_management/pdf/004_02_00.pdf
(研究会の討議より抜粋)
・日本型雇用、終身雇用、年功賃金、労働組合を特徴とするメンバーシップ型からジョブ型への移行が必要
・人材獲得競争の激化を念頭に置くと、経営者の視点としては、外部労働市場とリンクしていくことを前提に社内の制度を設計していくことは必須なのではないか
課題としてメンバーシップ型が取り上げられています。人材獲得競争が今後もっと激化していきますし、社内人材だけでなく、外部とリンクするジョブ型への移行が討議されているようです。
競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会(平成28年11月)
職務の定義づけ、ジョブディスクリプションの明確化
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/diversity/004_giji.html
・多様な人財を登用する上でジョブが不明確である点がネックとなっている。メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ人財マネジメントシステム転換が必要である。
・管理職以上の全ポストの格付けや、人材評価であるパフォーマンスマネジメント、管理職の処遇制度の改訂(ジョブベースの処遇制度)等を全世界共通の仕組みとして実施している。
・現場レベルのマネジメントは全てジョブ型にはなっておらず、外国人従業員からの不満もあり、改善の余地が大きい。
確かに、ジョブデスクリプションの明確化はジョブ型にとって必須事項です。これが不明確だと推進できません。
外国人従業員にとってはジョブ型のJD定義は今現在でも極めて重要ですし、早期改善する必要がありますね。
「雇用関係によらない働き方」について/経済産業政策局(平成28年10月)
労働市場・雇用制度の柔軟性向上
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/001_03_00.pdf
グローバルかつスピーディーなビジネス展開の時代に対応して、企業と労働者との効率的な関係は、旧来のいわゆるメンバーシップ型(企業への帰属を固定化して人材投資を行っていく)一本槍から産業の特性やビジネスモデルに応じてメンバーシップ型とジョブ型(特定の職務による労働者の採用・配置)を最適に組み合わせたモデルに転換しつつあり、今後は、相互に自立的なパートナーシップ型の関係も選択肢として拡大していくことが想定される。
経産省が検討している新産業構造ビジョンとしても、ジョブ型が登場しています。これによって、グローバル展開や、自立的なパートナーシップ関係も広く確立していきそうです。
経済産業省による「ジョブ型」に関する発信 まとめ
ここでは経産省が発信している「ジョブ型」についての内容を集め、それに対する解釈をコメントしました。
数年前からジョブ型については検討が進められていて、現在でもグローバル化やダイバーシティのためにさらに推進しているのが分かりました。
現在コロナショックで加速しているジョブ型雇用ですが、政府、各省の動きを含めて今後も状況を把握しておく必要がありそうですね。
経産省の思惑がうまくいくのか、今後の日本企業へジョブ型企業が導入されるのかどうかについて、こちらで説明していますので、よかったら合わせてご確認ください。