「ジョブ型が導入できるのは日立や富士通だけでしょ?」
「中小企業への導入はリスク高いよね?」
この疑問にお答えします。
コロナ禍で注目を浴びているジョブ型雇用。
外出自粛でテレワークを行っている各日本企業では、リモートでの評価の不公平さ、責任のあいまいさといった問題も浮上し、評価制度、雇用制度の改革が迫られています。
この記事では、
ジョブ型が日本企業に本当に合うのかどうか
これについて、アフターコロナの状況を交えてご説明します。
今までの日本企業のジョブ型への取り組みとコロナの影響
以前より、新卒を一括採用して年功序列となり、終身雇用がほとんどの日本企業に対して、変革が必要だと言われ続けてきましたが、日本型・メンバーシップ型雇用が深く根付いた日本企業には、ジョブ型への移行がなかなか進んでいませんでした。
しかし、今回のコロナ禍で状況が一変しました。
伝統的なメンバーシップ型雇用は、管理職や各メンバーがコミュニケーションにより部署内の従業員の生産性を維持していましたが、テレワークでコミュニケーションが疎遠になり、各従業員の職務を明確にしたものがないと業務が進まないという状況に陥ることが多くなっています。
そこで注目を浴びているのが欧米流「ジョブ型」雇用の導入なんですね。
日本でその先陣を切ったのが日立製作所や富士通の大企業でした。
富士通は今年度から管理職に「ジョブ型」を採用し、来年度には全従業員へ広げる計画を立てています。また、日立製作所も来年4月から職務を明確に記述する「ジョブ型」雇用を本格的に導入することを発表しました。
このように大企業・有名企業が相次いで導入を進めている「ジョブ型」に対して、他の大企業や中小企業も追随の気運が高まっています。
日立と富士通のジョブ型の状況についてはこちらにまとめています。
ジョブ型導入は中小企業にも進むのか
大企業の富士通、日立には導入されましたが、アフタコロナでは中小企業など日本企業に広く浸透していくのでしょうか?
これを考えるためには、ジョブ型の特徴や問題点を細かく見ていく必要があります。
ジョブ型の問題1「労働対象の永続性」と「解雇規制」
ジョブ型では、労働の対象となる業務を特定し、その労働に適合する社員を雇うことになります。
しかし、この変化が多い時代では、この労働の対象・特定の職務が常に固定化されているか疑問があります。変化して、職務が無くなってしまった場合はその社員を解雇しなければなりません。
人材が流動的になっている欧米に比べ、現在の日本の労働市場では転職がまだまだ簡単ではありません。
また、解雇規制等の労働者権利が保障されている日本で、労働対象がなくなったからという理由だけで簡単に解雇できるのかどうか分かりません。
ジョブ型の問題2「雇用・解雇手続きの増大」
ジョブ型では、新卒一括採用のように一時期に一律で雇用できるわけではありません。その業務に合った内容の人材を適切な時期に採用する必要があります。つまり、現在、各社で採用を担当している人事部で対応しきれるのか、という疑問があります。
過去にも、日本企業で採用されてきた「成果主義」がありますが、「ジョブ型」ではこれを会社業務の一部の範囲でなく多くの範囲に適用することになります。
しかも、成果の定義だけでなく、成果を出すまでのプロセスも含むジョブという形にあった人材を雇用する必要あります。
さらに、前述のように、対象労働範囲が終了するごとに解雇が行われます。一つの業務プロジェクトには複数のジョブが存在しますので、ある業務プロジェクトが終了するたびに大規模な解雇手続きが必要です。
各社の人事部リソースはそこまであるのでしょうか?
ジョブ型の問題3「職務記述書作成での膨大なリソース」
ジョブ型では、業務内容を定義するジョブデスクリプションという職務記述書が必要です。
これに対し、日本の多くの中小企業では各従業員が行っている職務内容をドキュメント化・見える化していません。
中小企業では、メンバーシップ型のように、上司や先輩から資料なしで業務を教わったり、何か発生する都度に業務内容が決められるなどの状況が往々にして発生します。
中小企業だけでなく大企業でも、前述したように技術やビジネスで変化の多い時代に対応するために、業務内容がどんどん変わっていく可能性があり、ジョブデスクリプションとして定義してしまうと、柔軟性に欠けたり、著しい変化に対応できない可能性が高いです。
ジョブ型を導入することで、変化し続ける企業の競争力が失われては論外ですよね!
つまり、安定した経営環境、職務環境に限定した導入にとどまると思われます。
以上、3点のジョブ型特徴から考えると、日本では日立や富士通のようなグローバル大企業で、グループ会社を持ち、職務を細分化して特定でき、労働力の需給がスムーズとなるような企業にしか採用されないと思われます。
今は大企業がジョブ型採用を加速させていますが、中小企業では、ジョブ型のデメリットが大きく影響するので、一定期間は様子見の状態が続くでしょう。
アフターコロナの日本企業にジョブ型は導入加速されるか まとめ
今回はジョブ型が日本企業に合うのか、アフターコロナでは中小企業へも導入されていくのか、について説明しました。
前述したように、日本企業では次々に移行が発表されている「ジョブ型」について、今後も目が離せませんね。
各社の状況については次の記事にもまとめています。よかったら合わせてご確認ください。